帝力何有於我哉

無職。汎用人型雑用兵器。型式番号: 高木 宏 ( Hiroshi Takagi )

10歳の男の子を本好きにするために…

10歳くらいの時に親が薦めてくれた本で夢中になった本は?

と、友人からLINEが来た。読み聞かせ・朗読活動でがんばっているのでその方面での課題のようだ。わたしの両親は、本に関してはほんとによくしてくれた。誕生日、クリスマスなどの機会に与えてくれた本は、みんなじっくり選書されたものばかりではないかと思う。以下の二冊も親に買ってもらったもの。

とりあえず思い出した二冊

馬ぬすびと (福音館創作童話シリーズ)

馬ぬすびと (福音館創作童話シリーズ)

 

 福音館書店の児童書。変形ハードカバーで、ほぼ正方形の本だった。この本は、まず、文章がいい。朗読用CDがあるのではないかと探したが、主人公・馬ぬすびと九郎次の馬に対する熱い思いは、声に出して読んでみると一層深く心にしみる。“生きがいとは夢に向かって突き進むことだ” 、というストレートな作者のメッセージが突き刺ってくるようだ。少年の頃、何度も読み返してかなりの部分の文章を暗記してしまった。特にラストの一文は大好き。

太田大八さんの絵もすばらしい。少年時代の九郎次が山野をかけて野生馬をおいかけるシーン、表紙の盗賊団の襲撃シーン、最後の見開きの九郎次の形相…、すべて今も脳裏に浮かぶ。発売日を見ると、私が小学五年生の時の本のようだ。まあ、夏までは10歳だったからよいか。

青矢号―おもちゃの夜行列車 (岩波少年文庫)

青矢号―おもちゃの夜行列車 (岩波少年文庫)

 

 こちらは、関口さんの翻訳ではなく、杉浦明平訳で、『青矢号のぼうけん』(岩波ものがたりの本)を読んだのだが、現在は絶版のようだ。
ちょっと魔女っぽいベファーナおばさんの店から、おもちゃたちが逃げ出して、青い電気機関車のおもちゃ(青矢号)が大好きなフランチェスカ少年の元に向かう、というお話。船長さん、兵隊、お人形、犬のぬいぐるみなどのおもちゃたちの個性が楽しい。フランチェスカの元へ向かう旅程でおこる様々な困難、一人また一人と減っていく仲間たち。雪の一夜の話なのだが、長編ロマンの味わいがあり、ストーリーにのめり込んでしまう。

何回も読み返したこの二冊に共通するのは、やはり、単純なストーリーの面白さだろう。

でも、やっぱり読み聞かせ重要。

このふたつの本が面白いことは保証するが、すべての10歳の男の子にうけるかどうかは疑問だ。このレベルのストーリー性がはっきり出る児童文学に手が出るためには、やはり、低学年での読み聞かせが重要だと考える。

いい文章を読み聞かせると、こどもの頭の中に映画が上映される。いったん、脳内映画館の与えてくれる楽しみを知った子なら、書物の中のストーリーという宝を自分で発掘できる動機付けはできている。